App Store Connectのキーワードフィールドは、わずか100文字しかありません。たったそれだけのテキスト欄ですが、ここの設計を変えただけで個人開発アプリの月間ダウンロード数が2倍以上になることは、決して珍しくありません。私自身、Rorkで生成した小さなアプリのキーワードを1度書き直しただけで、検索経由のインストール数が翌週から目に見えて跳ね上がった経験があります。
不思議なことに、このフィールドは多くの個人開発者が「とりあえずアプリ名と関連語を並べておけばいい」と片付けてしまう場所でもあります。スクリーンショットや説明文には何時間もかけるのに、キーワードフィールドだけは5分で済ませてしまう。それで埋もれてしまったアプリを、私はこれまで何本も見てきました。
Rorkで作ったアプリを日本のApp Storeで見つけてもらうために、キーワードフィールドをどう設計するかを実例とともに整理しました。スプレッドシートを開いてキーワードを書き出してみる前に、ぜひ最後まで読んでみてください。
なぜキーワードフィールドだけで検索順位が変わるのか
App Storeの検索ランキングは、おおまかに言うとアプリ名・サブタイトル・キーワードフィールド・説明文・カテゴリ・ダウンロード数・レビュー評価の組み合わせで決まります。このうち、開発者が直接コントロールできて、しかも検索アルゴリズムが「この単語は検索対象に含めて良い」と明示的に判定するのが、キーワードフィールドです。
つまり、キーワードフィールドに含まれていない単語は、よほど他の要素(アプリ名やサブタイトル)に出てこない限り、検索結果に出てきません。逆に言うと、ここに入れるだけで検索対象になる単語が必ずある、ということです。
これが個人開発者にとって決定的に重要です。広告予算を持たない私たちが新規ユーザーと出会えるのは、ほぼオーガニック検索だけだからです。キーワードフィールドの100文字は、広告費ゼロで使える最も強力な集客チャネルだと考えてください。
もう一つ、静かな利点があります。このフィールドはエンドユーザーの目に触れません。アプリ名やサブタイトルと違って、見た目の美しさを気にせず、実用一辺倒の泥臭い単語を詰め込めます。「記録」「一覧」「メモ」「管理」——タグラインに書くと味気ない言葉こそ、検索バーに実際に打ち込まれる言葉です。
100文字制限の正しい数え方とよくある誤解
App Store Connectのキーワードフィールドは100文字までですが、何が1文字としてカウントされるかには、きちんとしたルールがあります。
- カンマ(
,)は1文字としてカウントされます - カンマの前後にスペースを入れるとそのスペースも1文字消費します
- 全角文字(日本語1文字)は、英数字と同じ「1文字」としてカウントされます
- 改行は使えません
- 単数形と複数形(英語)は別の語として扱われます。両方を狙う明確な理由がなければ、どちらか一方に絞ります
つまり「動画編集, 写真加工, 字幕, AI」と書くと、実際に使えるキーワードの文字数は4語分のテキストよりも少なくなります。スペースを入れない方が良いという話は、ここから来ています。
❌ NG例(カンマの後にスペース)
動画編集, 写真加工, 字幕, AI, テンプレート
✅ OK例(スペースなしで詰める)
動画編集,写真加工,字幕,AI,テンプレート
たった4文字の差ですが、長いキーワード設計では1〜2語分の余裕を生みます。「これくらいいいだろう」と妥協しないことが大事です。
アプリ名・サブタイトル・キーワードフィールドの役割を分ける
ここで一番伝えたいのは、「キーワードフィールドにアプリ名やサブタイトルにすでに含まれている単語を書くのは無駄」ということです。
App Storeの検索アルゴリズムは、アプリ名・サブタイトルに含まれる単語をキーワードフィールドの単語よりも強く重み付けします。そしてアプリ名やサブタイトルに含まれている単語は、自動的に検索対象になります。つまり、アプリ名が「シンプル家計簿」、サブタイトルが「毎日続く支出管理アプリ」だった場合、キーワードフィールドに「家計簿」「支出」「管理」と書く必要は基本的にありません。
役割分担を表に整理すると、次のようになります。
| フィールド | 文字数 | 検索の重み | 入れるべきもの |
|---|---|---|---|
| アプリ名 | 30文字 | 最強 | 一番ビッグなキーワード1〜2語+アプリの個性 |
| サブタイトル | 30文字 | 強い(アプリ名に準ずる) | アプリ名で取り切れない補足キーワード+ターゲット読者像 |
| キーワードフィールド | 100文字 | 中 | 上2つに含めなかった、検索されうる関連語をできるだけ多く |
サブタイトルは検索対象としてはアプリ名と同じくらい強いので、ここに入れるべきキーワードを「なんとなく機能の説明」で埋めてしまうのは、もったいない使い方です。3つのフィールドを1枚のスプレッドシートに並べ、重複した単語を消してから設計を始めると、この取りこぼしがほぼなくなります。
日本語アプリで本当に効くキーワードの選び方
日本語のApp Storeでは、英語圏とは違ったキーワード戦略が効きます。私が個人開発で実際に使っている考え方を共有します。
ひらがな・カタカナ・漢字の表記揺れを意識する
「家計簿」と「かけいぼ」「カケイボ」では、検索結果にヒットする件数が違います。多くのアプリは漢字の「家計簿」だけしか入れていませんが、スマホで「かけいぼ」とひらがなで打つユーザーも一定数います。文字数が許す範囲で、表記の揺れを2〜3パターン入れておくと、それだけで取りこぼしが減ります。
英語キーワードを混ぜる
App Store内で「expense tracker」のような英語で検索するユーザーは、日本でも案外多いです。特に技術系・クリエイター向けアプリでは、英語キーワードを1〜2語混ぜるだけで在外日本人ユーザーや海外居住者からの流入が期待できます。
競合アプリ名は入れない
「○○の代わりになるアプリ」を狙って競合アプリ名を入れたくなりますが、これはAppleのガイドライン違反になり、リジェクト対象です。短期的に効いても長期的にはアカウント停止リスクがあるため、絶対に避けてください。商標登録された他社のプロダクト名も同様です。
サジェスト検索のキーワードを観察する
App Store検索バーに自分のアプリのジャンル名を入れると、サジェストに関連語が出ます。これは実際に検索されている語の集合なので、必ずチェックしてください。たとえば「家計簿」と打つと「家計簿アプリ」「家計簿無料」「家計簿シンプル」などが出てきます。これらの関連語こそ、キーワードフィールドに入れるべき候補です。iPhoneとiPadの両方に対応しているアプリなら、両方の端末でサジェストを確認しておくと安心です。候補が微妙に違うことがあります。
Rorkで作ったアプリで実際に使えるキーワード設計の5ステップ
ここからは実践です。Rorkで生成したアプリのキーワードフィールドを設計するときの、私が普段使っているフローです。
- アプリの「核となる動詞」を1つ決める — そのアプリでユーザーが何をするのかを動詞で書き出します(記録する、編集する、共有する、計算する など)
- その動詞に紐づく名詞を5〜10個リストアップする — 動詞の対象を具体的に書き出します
- App Storeサジェストで関連語を10〜15個拾う — 上記の名詞を1つずつApp Store検索バーに入れて、サジェストに出てきた語をメモします
- アプリ名とサブタイトルに含まれる単語を除外する — リストから、すでにアプリ名やサブタイトルにある単語を消します
- 残ったキーワードを表記揺れ込みでスペースなしのカンマ区切りで詰める — 100文字に収まるまで取捨選択します
このフローで作ったキーワードフィールドの一例(家計簿アプリ想定)はこんな感じです。
かけいぼ,カケイボ,家計管理,支出記録,家計予算,money,expense,お小遣い,節約,貯金,出費,収支
これで98文字。アプリ名「シンプル家計簿」とサブタイトル「毎日続く支出管理アプリ」と組み合わせて、漏れなく日本人ユーザーが検索しそうな単語をカバーできます。
地域別・言語別にキーワードフィールドを使い分ける
これは見落とされがちですが、効果が大きい一手です。App Store Connectでは、アプリが対応しているロケアルごとに別々のキーワードフィールドを設定できます。「日本語(日本)」のキーワード欄と「英語(アメリカ)」のキーワード欄は、それぞれ独立した100文字のキャンバスです。
Rorkで作ったアプリを多言語対応させたとき、ここを空欄のまま、あるいは英語のキーワードをそのままコピーして済ませてしまうと、せっかくの100文字を捨てているのと同じです。地域ごとに次の点を調整します。
- その言語圏で実際に使われる語で埋め直す — 直訳ではなく、その国の人が検索バーに打つ言葉を使います。同じ「割り勘」でも、英語圏では「split bill」、地域によっては別の言い回しが主流です
- サジェストもロケアルを切り替えて観察する — App Storeの地域を切り替えると、サジェストに出る語も変わります。各ロケアルで拾い直すのが理想です
- 数値の桁や通貨表現に注意する — 金額系アプリなら、その地域の通貨名や単位が検索語に混じることがあります
多地域展開の設計そのものを深掘りしたい場合の考え方は、記事後半でリンクする多言語ASOの記事にまとめてあります。まずは主要な2〜3ロケアルだけでも、キーワード欄を個別に設計するところから始めてみてください。
キーワードを更新したら必ずやること
App Store Connectでキーワードフィールドを変更しても、即座に検索順位に反映されるわけではありません。変更したあとに私が必ずやっているのは、次の3つです。
- App Store Connectの「公開準備中」状態のまま、新バージョンをサブミットする — キーワードフィールドの変更はバージョン提出時に反映されるため、提出しない限り検索順位は古いキーワードで動き続けます
- 更新後1〜2週間は順位を毎日チェックする — App Store Connect Analyticsでインプレッション数とユニットの推移を見ます。検索順位が下がった場合は、追加した単語が逆効果だった可能性があります
- 変更前後のキーワードリストをスプレッドシートに保存する — 「何を変えて結果がどう動いたか」を記録しておくと、次のアップデートで判断材料になります
App Storeの検索アルゴリズムは少しずつ変わっていくので、3〜6ヶ月に一度はキーワードを見直すのが理想です。完璧を目指す必要はありません。今のキーワードよりちょっとマシなものを定期的に投入する、それで十分です。私自身は、審査提出が必要なマイナーアップデートのたびに、ついでにキーワードも1〜2語だけ入れ替える、という運用に落ち着きました。これなら追加の手間はほぼゼロで続けられます。
よくある失敗と、その直し方
最後に、個人開発者のキーワード欄で私が繰り返し見てきた失敗を、対処とセットで挙げておきます。
- アプリ名の単語をキーワード欄にも重複させている → 重複分を消し、空いた文字数でサジェスト由来の関連語を追加します
- カンマの後にスペースを入れている → スペースを全部削り、詰め直します。これだけで1〜2語増えます
- 漢字表記だけで、ひらがな・カタカナを入れていない → 主要な語だけでも表記揺れを1〜2パターン足します
- 多言語対応なのに全ロケアルで同じキーワードを使い回している → 主要ロケアルだけでも個別に設計し直します
- 効果測定をせず、なんとなく単語を入れ替えている → 変更前後をスプレッドシートに残し、Analyticsのインプレッション推移と突き合わせます
どれも一晩あれば直せるものばかりです。派手さはありませんが、こうした小さな修正が積み重なって検索流入を底上げしていきます。
全体を振り返って — 今日30分でできること
今夜、寝る前の30分でいいので、自分のアプリのキーワードフィールドを開いてみてください。そして、アプリ名とサブタイトルにすでに含まれている単語があれば、そこから消す。空いた文字数で、App Storeサジェストから拾った関連語を1〜2個追加します。これだけでも検索流入は変わります。
キーワードフィールドの100文字は、個人開発者にとって最も投資効率の良いマーケティング工数です。Rorkでアプリを作る速度が上がった分、こうした細かい最適化に時間を回せるはずです。次のリリースのタイミングで、ぜひ試してみてください。実装の参考になれば幸いです。
ASOをもう一段深く理解したい方には、Rorkで作ったアプリをApp Storeでヒットさせる:ASO・価格・課金設計の実践ガイドで全体像を確認したあと、12年・16言語で磨いたグローバルASO戦略で多言語対応の考え方まで広げてみるのがおすすめです。リリース直後のグロースフェーズについてはRorkアプリで最初の10万円を稼ぐまでの実戦手順が地続きの内容になっています。