自分のサイトに Stripe の決済を入れた日、いちばん手が止まったのは実装ではありませんでした。公開ボタンの直前になって、特商法のページに自宅の住所を書くのかどうか、まだ決めていないことに気づいたのです。いま思えば、実装より前に済ませておくべき宿題でした。
コードは何度でも直せます。けれど、一度公開した住所は取り下げても検索結果のどこかに残ります。課金を入れる前に決めるのは、価格より先にこの欄です。
Rork でアプリを作って有料プランを付けようとしている方も、同じ場所で立ち止まるはずです。ここでは消費者庁のガイドに沿って、載せる欄と省ける欄を並べ、個人名義でどう決めるかを書き残します。
最初にお断りしておくと、私は法律の専門家ではありません。以下は2026年10月時点で消費者庁の公開ページを読んだ内容と、自分の運用で整理した判断の順番です。個別の判断は、消費者庁や消費生活センター、専門家にご確認ください。
表示事項は15項目あり、名前・住所・電話番号は「省ける欄」として扱われています
消費者庁の通信販売のガイドでは、広告に載せる事項として、価格、支払時期と方法、引渡時期、返品に関する事項、事業者の氏名(名称)・住所・電話番号などが並んでいます。ソフトウェアの動作環境や、2回以上続く契約(定期購入)の条件も含まれます。
私が驚いたのは、省ける欄のほうが少ないという点でした。ガイドの表で省略の対象とされているのは、氏名・住所・電話番号です。一方で、次の欄は省けない項目として並んでいます。
| 欄 | 省略 | 個人開発で書く中身の例 |
|---|---|---|
| 氏名(名称) | 条件つきで可 | 屋号ではなく、請求時に開示する旨と窓口 |
| 住所 | 条件つきで可 | 自宅、または開示の仕組み |
| 電話番号 | 条件つきで可 | 請求時の開示、または連絡用の番号 |
| 返品・解除に関する事項 | 不可 | デジタルの利用権は返品不可、解約の手順 |
| 2回以上続く契約の条件 | 不可 | 更新周期、次回更新日、解約方法 |
| ソフトウェアの動作環境 | 不可 | 対応 OS の最低バージョン |
| メールアドレス | 不可 | 常時受け取れる連絡先 |
つまり「住所を出したくない」は決められても、「返品と解約の書き方は決めなくてよい」にはなりません。表記ページで先に埋めるのは、実は省けない欄のほうなのだと、読み返すたびに気づかされます。
住所を載せない選択は、「遅滞なく出せる仕組み」が前提です
省略が認められる条件は、ガイドによると2つです。請求があれば書面(インターネット通販では電子メールも可)で提供すると広告に表示すること。そして、請求を受けたら実際に遅滞なく出せる措置を取っていること。
ここでいう「遅滞なく」は、申込みを決める前に読者の手元に届く、という意味だとガイドは書いています。申込期間の短い取引では難しいとも書かれています。「請求があれば開示します」と1行書いておけば済む、という読み方はできません。
私が個人名義で決めるときは、次の3択を並べて、いちばん後悔の少ないものを選びます。
| 選択肢 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自宅住所を載せる | 手続きを増やしたくない人 | 公開後は取り下げても履歴が残る |
| 請求時に開示する | 請求に即日近く返信できる人 | 実際に返せる体制と窓口が必要 |
| 事業用の別住所を借りる | 自宅を出したくない人 | 特商法表記への利用を認める契約かを確認する |
ここで失敗しやすいのは、請求時開示を選びながら窓口を用意しないことです。メールアドレスは省けない項目ですから、問い合わせ専用のアドレスを先に作っておけば、開示の窓口も兼ねられます。
表記ページの雛形は、省けない欄から先に埋めます
私が最初に書く雛形は、下のとおりです。住所の欄は、選んだ方法によって差し替えます。
販売事業者: (氏名または屋号。請求時開示の場合はその旨)
所在地: (住所、または「請求があった場合、遅滞なく開示します」)
電話番号: (同上)
メールアドレス: support@example.com
販売価格: アプリ内の購入画面に表示(税込)
支払時期・方法: 購入確定時、ストアの決済手段
提供時期: 決済完了後すぐ
返品・キャンセル: デジタルコンテンツの性質上、購入後の返品はできません
解約方法: (ストアのサブスクリプション管理画面から、の手順)
動作環境: iOS ○○以上 / Android ○○以上
コメントを一つ添えるなら、support@example.com は例です。実際には、受け取れなくなった瞬間に条件を満たさなくなるアドレスを書かないでください。
アプリ内課金だけの場合と、自分の決済ページを持つ場合で、足す欄が変わります
App Store や Google Play のアプリ内課金だけで売る場合と、Stripe など自分の決済ページを持つ場合では、「最終確認画面」の責任の所在が違ってきます。ガイドでは、インターネットでの申込みについて、最終確認画面に分量・価格・支払時期と方法・引渡時期・返品に関する事項などを表示することが求められています。
自分の決済ページを持つなら、この画面は自分で作ります。アプリ内課金だけなら、購入確認のダイアログは各ストアが出します。ただし、ストア側の事業者情報の扱い(たとえば EU 向けの配信で必要になる申告)は別の話で、Apple・Google の公式ドキュメントで確認が要ります。私はここを自分の判断で決めきれませんでしたので、迷ったら専門家に尋ねる欄として残しています。
アプリ自体の公開手順は、Apple Developer アカウントの手順と公開前の収益チェックリストに分けてまとめています。
決める順番は、返品と解約、連絡先、最後に住所です
整理すると、私の順番はこうなります。
- 返品と解約の書き方を決めます(省けない欄の中で、最も文面に迷う)
- 常時受け取れる連絡用アドレスを作ります
- 住所と電話番号は、載せる・請求時開示・別住所の3択から選びます
- 選んだ方法が実際に回るかを、自分宛ての請求メールで試します
4つ目だけは、公開前に必ずやっておくと安心です。自分宛てに「住所を教えてください」と送り、半日以内に返せるかどうかを見ます。返せなければ、その選択は私の暮らしに合っていないという答えです。
課金を入れたあとに収益の設計を整えたくなったら、広告と定額課金をどう両立させるかをハイブリッド収益モデルの記事に書いています。
まずは今日、連絡用のメールアドレスを一つ作ってみてください。住所の欄を決める前に、窓口があるだけで選べる道が増えます。この順番だけは、次に新しい課金を入れるときも変えないつもりです。