Rorkで作ったアプリをApp Storeに出した後、最初の1週間で一番よくもらったフィードバックが「起動時にたまにクラッシュする」でした。
Rorkで生成したコードは、機能としては動いていました。でも「ユーザーが予期しない順番で操作する」「端末が古い」「ネットワークが不安定」——そういう現実の環境に置かれると、ところどころ脆くなっていた。
AIコード生成ツールは「作る」を明確に速くしてくれます。でも「育てる」、つまりリリース後の運用フェーズに入ると、話が変わってきます。この記事は、その変化について書いています。
Rorkが得意なことと、そうでないこと
最初に正直に言うと、Rorkでアプリを作った体験は良かったです。プロトタイプの速さは本当に圧倒的で、「こういう画面が欲しい」を伝えるだけで形になっていく感覚は、個人開発者として純粋に嬉しいものでした。
ただ、使い込んでいくとわかってくる苦手な部分もあります。
得意なこと:
- UIコンポーネントの生成(画面の骨格を作るスピードは圧倒的)
- 定型的な CRUD 操作(データの取得・表示・更新・削除)
- サードパーティライブラリの基本的な組み込み
苦手なこと(補完が必要な部分):
- エラーハンドリングの網羅(ハッピーパスは書けるが、異常系が薄い)
- アクセシビリティ対応(VoiceOverへの対応など)
- パフォーマンスの最適化(リスト表示の遅延読み込みなど)
- 端末固有の挙動への対処(古いiOSバージョンでの動作など)
これは Rork への批判ではなく、AIコード生成ツール全般の現在地だと思っています。「平均的なケースを速く作る」のは得意で、「エッジケースを丁寧に処理する」のは人間が補う必要があります。
リリース後に必ず向き合う「エラーハンドリング問題」
Rorkが生成するコードで最もよく見られるパターンは、ハッピーパス中心の実装です。APIが正常に返ってくれば問題ないけれど、タイムアウトや予期しないレスポンス形式には対応していない、ということが起きやすいです。
// ❌ Rorkが生成しがちなパターン(ハッピーパスのみ)
func fetchUserData(userId: String) async {
let response = try await apiClient.get("/users/\(userId)")
let user = try JSONDecoder().decode(User.self, from: response.data)
self.user = user
}
// ✅ リリース後に必要になる実装
func fetchUserData(userId: String) async {
isLoading = true
defer { isLoading = false }
do {
let response = try await apiClient.get("/users/\(userId)")
guard response.statusCode == 200 else {
errorMessage = "データの取得に失敗しました(\(response.statusCode))"
return
}
let user = try JSONDecoder().decode(User.self, from: response.data)
self.user = user
} catch URLError.timedOut {
errorMessage = "接続がタイムアウトしました。もう一度お試しください。"
} catch URLError.notConnectedToInternet {
errorMessage = "インターネット接続を確認してください。"
} catch DecodingError.keyNotFound(let key, _) {
// データ構造の変更を検知(APIのバージョン変更など)
errorMessage = "データ形式が変わりました。アプリを最新版にアップデートしてください。"
print("Missing key: \(key)") // デバッグ用ログ
} catch {
errorMessage = "予期しないエラーが発生しました。"
print("Unexpected error: \(error)")
}
}特に DecodingError の処理は重要です。バックエンドのAPIが変わると、古いバージョンのアプリはクラッシュではなくデコードエラーを出します。これをユーザーに「アップデートしてください」と伝えられるかどうかで、サポートコストが大きく変わります。
クラッシュレポートの読み方
リリースしたら、App Store Connect の「クラッシュ」タブを毎日確認する習慣をつけることをお勧めします。Rorkで作ったアプリに限らず、リリース直後は予期しないクラッシュが一定数出ます。
クラッシュレポートで最初に確認すべきは「発生率」と「影響ユーザー数」です。件数が多くても影響ユーザーが少なければ特定端末の問題の可能性があり、逆に少ない件数でも影響ユーザーが多ければ優先度が高い。
私が経験した中で多かったのは:
- 起動時のクラッシュ: 初回起動時の初期化処理が特定の条件で失敗していた
- バックグラウンドからの復帰時: アプリが一時停止→復帰するタイミングでの状態管理ミス
- メモリ警告後: 画像キャッシュを解放せずメモリを使い切っていた
これらはすべて、Rorkで生成したコードには含まれていなかった処理でした。Rorkは「動く状態」を作るのは上手ですが、「壊れにくい状態」を維持するための防御的なコードは手薄になりがちです。
Rorkで作ったアプリを「育てる」ための実践
結局のところ、Rorkは個人開発者の時間を節約してくれる強力なツールです。ただ、節約した時間をどこに使うかを意識する必要があると思っています。
私がリリース後に特に力を入れるようになったのは:
- クラッシュレポートの週次レビュー: 件数が少ないうちに対処するのが一番コストが低い
- レビューへの返信: 「こんな機能が欲しい」は次のバージョンの設計資料になる
- エラーログの収集: アプリ内でエラーが発生したとき、どのくらいの頻度で起きているかを把握する
Rorkが生成するコードの品質は、使い方と追加する処理次第で大きく変わります。「Rorkで作ったから」ではなく「自分がリリースするプロダクトとして何が必要か」という視点で補完する——そのバランス感覚が、AIコード生成ツールを使いこなすコツだと感じています。
最初のアプリをリリースしたとき、ユーザーが使ってくれている事実は純粋に嬉しかったです。その嬉しさを長続きさせるために、地道な保守作業を続けています。