モバイルアプリのデザインをAIに作らせるとき、最大の課題は「AIが本当に自分たちのデザイン規則を理解しているのか」という不安です。色は指定通りか、フォントサイズは合っているか、余白は統一されているか——こうした細部まで AIが忠実に再現できたら、手直しの時間が劇的に減ります。
Googleが公開した DESIGN.md というオープンソース形式を使うと、この問題が解決します。これはシンプルなマークダウン形式で、アプリのデザイン規則をAIにもわかるように記述する仕組みです。
DESIGN.mdってなに?
DESIGN.mdは、Googleが設計したドキュメント形式です。Apache 2.0ライセンスで公開されており、誰でも自由に採用できます。
基本的な考え方は、ブランドガイドラインやデザインシステムをマークダウンで書いて、AIツール(Rorkなど)に読ませることで、生成されるUIが一貫したデザインに従うようにするというもの。公式のFigmaやAdobeのデザインツール同様、「この色はどんな場面で使う」「このフォントは見出しに限定」といったルールを明文化できます。
なぜモバイルアプリに有効なのか
モバイルアプリ開発では、デザインの統一性が特に重要です。複数の画面で同じボタンなのに色が違う、同じテキストサイズなのに行間がバラバラ——こうした不統一は、アプリを未完成に見せてしまいます。
DESIGN.mdを使うと、
- 色トークン: プライマリカラー、セカンダリカラー、エラーカラー等を定義
- タイポグラフィ: 見出し用、本文用、キャプション用フォントを区別
- 余白・グリッド: ボタン間隔、コンテナ内余白の基準を記述
- コンポーネント規則: ボタン・カード・入力フィールドの見た目を説明
といった情報を、AIがすぐに参照できる形で用意できます。すると、新しい画面をAIに作らせるときに「DESIGN.mdを参考にして」と指示するだけで、過去の画面と統一されたUIが生成されます。
実装例:シンプルなDESIGN.md
実際に、Rorkを使ったカジュアルなアプリ開発用のDESIGN.mdを書いてみましょう。
# Design Tokens (YAML形式)
colors:
primary: "#2563EB" # ブランドブルー
secondary: "#10B981" # エメラルドグリーン
error: "#EF4444" # 警告レッド
neutral_light: "#F3F4F6"
neutral_dark: "#1F2937"
typography:
heading_1:
font_family: "System Font"
font_size: "28px"
line_height: "36px"
font_weight: "700"
heading_2:
font_family: "System Font"
font_size: "20px"
line_height: "28px"
font_weight: "600"
body:
font_family: "System Font"
font_size: "16px"
line_height: "24px"
font_weight: "400"
spacing:
xs: "4px"
sm: "8px"
md: "16px"
lg: "24px"
xl: "32px"そして、各セクションの後に、人間向けの説明を加えます。
## Colors
### Primary (#2563EB)
This is our brand blue. Use it for:
- Main action buttons (like "Create", "Save", "Continue")
- Active tab indicators
- Primary links
DO NOT use for:
- Error states
- Disabled buttons
- Secondary information
### Secondary (#10B981)
Success and positive states. Use for:
- Confirmation messages ("Success!")
- Checkmarks and badges
- Progress indicators (completed steps)
### Error (#EF4444)
Use ONLY for error messages and invalid form fields.AIツールがDESIGN.mdを読む仕組み
Rorkや他のAIツールでは、プロンプト内に DESIGN.mdを貼り付けることで、生成されるUIがそのルールに従うようになります。
使い方:
プロンプト例:
「以下のDESIGN.mdに従って、タスク管理アプリのホーム画面を作成してください。
ボタンはプライマリカラーを使い、見出しはHeading2スタイルで、パディングはmd(16px)を基準にしてください。
[DESIGN.mdの内容をここに貼り付け]
画面仕様:
- 上部に大きな見出し「マイタスク」
- その下にタスク一覧(各項目は16pxのpaddingで囲む)
- 右下に「新規タスク」ボタン(プライマリカラー)
」
このようにDESIGN.mdを明示的に参照させると、AIが色・余白・フォントを「この指定を守らないといけない」と認識し、品質が大きく向上します。
CLIツールで検証する
Google公開のDESIGN.mdエコシステムには、検証ツールも含まれています。
# デザイン仕様の妥当性をチェック
designmd validate design.md
# Tailwind CSSの設定に自動変換
designmd export design.md --format=tailwind
# W3C Design Tokens Community Group形式に変換
designmd export design.md --format=dtcgこうしたツールを使うことで、書いたDESIGN.mdが実装可能な形式かどうか、矛盾がないかを事前にチェックできます。
Before/After:AIが生成するUIの差
DESIGN.mdなしでAIに指示した場合と、ありの場合の差を見てみましょう。
Before(DESIGN.mdなし):
- ボタンの色がランダム
- フォントサイズが不統一(見出しが16pxだったり32pxだったり)
- 余白がバラバラ(いちいち手直しが必要)
- ブランドの統一感がない
After(DESIGN.md参照):
- すべてのボタンが指定のプライマリカラーで統一
- 見出しが常に28px、本文が16pxで統一
- 余白が一貫して16pxベース
- 複数画面を生成してもデザインの統一性が保たれる
実際に使ってみると、手直し作業が50%以上削減されることが多いです。
始めるなら
- チームのデザイン規則を箇条書きにする(色・フォント・余白・ルール)
- Googleの 公式DESIGN.mdテンプレート を参考に、プロジェクト用に書き換える
design.mdファイルをプロジェクトルートに保存- Rorkにプロンプトを送るときに、DESIGN.mdの内容を貼り付ける
- 生成されたUIを確認し、必要に応じてDESIGN.mdを微調整
DESIGN.mdは、AIと人間が「同じデザイン言語」で会話するための橋渡しです。最初は手間に見えるかもしれませんが、チーム規模が大きいほど、長期的には大きな時間短縮につながります。
あなたのRorkプロジェクトに、ぜひ DESIGN.mdを導入してみてください。