最初のアプリが無事にストアへ並ぶと、不思議と2本目を作りたくなります。作り方が体に入り、Rork との対話の呼吸もつかめてきた頃です。そこで多くの方が最初に考えるのが「1本目をまるごと複製して、中身だけ入れ替えよう」という方法ではないでしょうか。
私自身、壁紙系のアプリを複数運用してきて、この「丸ごとコピー」に何度か助けられ、そして何度か足を引っ張られてきました。速く始められる魅力は本物ですが、後から効いてくる副作用もあります。何を使い回し、何を新しく作り直すか。その線引きを最初に決めておくと、2本目以降の保守がずいぶん軽くなります。
「全部コピー」が半年後に重くなる理由
複製そのものは悪いことではありません。問題は、アプリの中心にある部分まで一緒に複製してしまったときに起こります。
たとえば1本目のデータの持ち方(保存の仕組みや項目の並び)をそのまま2本目に写すと、見た目は別のアプリなのに、内側では同じ骨格を共有した双子のような状態になります。ここで厄介なのは、両者が少しずつ別々に育っていくことです。1本目に急いで加えた修正を2本目に写し忘れる。2本目で直したバグが1本目に残ったまま放置される。こうして「同じはずなのに微妙に違う」箇所が増えていきます。
同じ不具合を2回踏み、2回直す。これが、コピーで得たはずの時間を静かに食い潰していきます。使い回しの判断は「今すぐ速いか」ではなく「半年後に自分が2つを同時に面倒みられるか」で考えると、見え方が変わってきます。
迷わず使い回してよいもの — アプリの「足場」
一方で、積極的に使い回したほうがよい部分もあります。アプリの中身が何であっても形がほとんど変わらない、周辺の足場にあたる部分です。
具体的には、起動直後のオンボーディング画面、設定画面の枠組み、テーマ(配色やフォントの土台)、課金まわりの下ごしらえ、分析イベントの送り方などです。これらは「そのアプリならでは」の個性が薄く、どのアプリでもだいたい同じ振る舞いをします。個人開発で壁紙アプリを増やしていったときも、最初に共通化したのはオンボーディングでした。ここは作品ごとに作り直す意味がほとんどなく、むしろ揃えておいたほうが、初日の定着を見比べるときにも役立ちました。この経緯は「壁紙アプリ 6 本のオンボーディングを共通化して、1 ヶ月の初日定着を見た所感」に詳しくまとめています。
足場を使い回すときのこつは、Rork への指示を「1本目と同じオンボーディングの流れで作ってください」と、機能単位でお願いすることです。ファイルを手で移植しようとするより、振る舞いを言葉で再現するほうが、2本目の文脈になじんだコードが出てきます。
作り直したほうがよいもの — アプリの「核」
反対に、コピーせず新しく作り直したほうがよいのが、そのアプリを「そのアプリたらしめている」中心部分です。
メインの画面、扱うデータの構造、そしてアプリ内で使う言葉(「壁紙」「日記」「タスク」といった、そのアプリ固有の名前)。ここを1本目から引きずると、2本目の設計が1本目の都合に縛られます。たとえば壁紙アプリのデータ構造をそのまま日記アプリに転用すると、日記なのに「解像度」や「カテゴリ」といった余計な項目が残り、後から見て混乱の元になります。
核の部分は、1本目でうまくいった考え方だけを持ち込み、コードは新しく起こす。この切り分けが、2本のアプリを別々の生き物として健やかに保つ鍵になります。
何を使い回し、何を作り直すか
判断に迷ったときの目安として、大まかな仕分けを表にまとめておきます。
| 部分 | 方針 | 理由 |
|---|---|---|
| オンボーディング・設定画面の枠 | 使い回す | アプリごとの個性が薄く、揃えるほど比較や保守が楽になる |
| テーマ(配色・フォントの土台) | 使い回す | 見た目の一貫性が保て、変更も一か所で済む |
| 課金・分析の下ごしらえ | 使い回す | 仕組みは共通で、間違えると収益や計測に直結する |
| メイン画面・主要な操作 | 作り直す | アプリの価値そのもの。1本目の都合に縛られたくない |
| データの構造・項目名 | 作り直す | 核の骨格。転用すると不要な項目が残り混乱を生む |
| アプリ内で使う固有の言葉 | 作り直す | ドメインが違えば呼び名も違う。曖昧さは後で効く |
迷ったら「これはどのアプリでも同じか、このアプリだけのものか」と自分に問うてみてください。前者なら足場として使い回し、後者なら核として作り直す。この一問でおおよそ振り分けられます。
「コピー」を「自分の土台」に育てる
2本目、3本目と作っていくと、毎回コピー元を探すのが面倒になってきます。そこで一歩進めて、使い回してよい足場だけを「自分の出発点」として言語化しておく方法があります。
具体的には、共通のオンボーディング・設定・テーマ・課金の下ごしらえを、Rork に渡す最初のプロンプトの雛形として文章化しておくのです。ファイルを持ち回るのではなく、「いつもの足場」を言葉で残しておく。こうすると、新しいアプリを始めるたびに核だけに集中でき、足場は毎回同じ品質で揃います。私は複数アプリを並行して運用するうえで、この「言葉の土台」を持っておくことが、破綻を防ぐ一番の支えになっていると感じています。複数本を前提にした運用全体の設計は「Rork個人アプリで月10万円超を達成するポートフォリオ戦略」もあわせてご覧ください。
まだ1本目を作っている途中の方は、まず「Rork で初めてのアプリを30分で作る」で完成の手触りをつかんでから、2本目でこの線引きを試してみてください。
2本目に取りかかる前に、いちど「足場」と「核」を紙に書き分けてみる。たったこれだけで、半年後の自分がずっと楽になります。今日つくる小さな区別が、これから増えていくアプリたちを軽やかに保ってくれるはずです。お読みいただきありがとうございました。