「Rork と Lovable、どっちを使えばいいんでしょう?」——これは X やコミュニティでよく見かける質問です。両方とも「AI に話しかけてアプリを作る」プラットフォームに見えるため、初見では区別がつきにくい。しかし実際に触ってみると、両者は対象とする領域も、使い心地も、最終的に手元に残る成果物も、まったく違います。
この記事は、私が Rork で App Store / Google Play 公開アプリを複数本、Lovable で Web プロダクトを 3 本作った実体験を基に、両プラットフォームの本質的な違いを整理したものです。「どちらが優れているか」ではなく「あなたの目的にどちらが合うか」を判断できるようにすることが目標です。
まず最大の違い: 出力先プラットフォーム
ここを混同したまま比較すると話が噛み合いません。
Rork: iOS / Android のネイティブアプリを生成。出力技術は React Native + Expo。最終的にアプリストアで配信できます。
Lovable: Web アプリ・ランディングページを生成。出力技術は React + Vite + Tailwind + Supabase。Web ブラウザで動く SaaS や情報サイトに最適。
つまり「モバイルアプリを作りたい」なら Rork、「Web アプリを作りたい」なら Lovable、というのが第一の分岐点です。両方を 1 つのプラットフォームで賄うことはできません。
それぞれの得意領域
Rork が得意なこと
- 個人開発者が App Store / Google Play で配信するアプリの量産
- Expo 互換のため、後から VS Code 等で開いて手動編集できる
- AdMob 統合やアプリ内課金(Stripe / In-App Purchase)の実装
- iOS と Android を同じコードで両対応
私が特に評価しているのは、「最終成果物が普通の React Native プロジェクトとして取り出せる」 点です。Rork から離れて自前環境で運用に切り替えても、コードベースに違和感がありません。
Lovable が得意なこと
- Supabase をバックエンドとした認証付き Web アプリの素早いプロトタイピング
- ランディングページや LP の高速制作
- 内部ツール、ダッシュボード、フォーム系アプリ
- デザイン性の高い UI(Tailwind ベースで Lovable のデザイン感覚が反映される)
Lovable の強みは 「Supabase 連携が最初から組まれている」 ことです。認証、データベース、ストレージが数クリックで利用可能になり、Web プロダクトの初期立ち上げが明確に速いです。
料金体系の比較(2026 年 4 月時点)
両プラットフォームとも、AI 駆動の生成 AI API コストを内包しているため、ChatGPT Pro 等とは料金構造が異なります。
| 項目 | Rork | Lovable |
|---|---|---|
| 無料枠 | 限定的(試用程度) | 1 日あたり数メッセージ |
| 個人プラン | 月額 $20 程度〜 | 月額 $25 程度〜 |
| 上位プラン | $100+ / 月(Pro / Max) | $100+ / 月 |
| クレジット制 | あり(メッセージ数で消費) | あり(メッセージ数で消費) |
| エクスポート | GitHub 連携で完全コード取得可 | GitHub 連携で完全コード取得可 |
数値はプラン改定で変わるため、最新の公式価格を必ず確認してください。両者とも「使った分だけ消費」型のクレジット制で、複雑なリクエストほど消費が多くなります。
「所有権」と「エクスポート可能性」
これは個人開発者にとっては死活問題です。
Rork: GitHub 連携をオンにすると、生成されたコードがすべて自分の GitHub リポジトリに同期されます。Rork 側のサービスが止まっても、コードは手元に残る構造です。
Lovable: 同様に GitHub 連携でコード取得可能。Vercel / Netlify などへのデプロイも標準的な Vite プロジェクトとして可能です。
つまり、両者とも「ロックインされない」設計になっており、これは個人開発者にとって大きな安心材料です。私は両プラットフォームとも、初期開発のみそこで行い、途中から自分の VS Code に持ち込んで手動でメンテナンスに切り替えるパターンが多いです。
開発体験の違い
Rork の開発体験
- Web エディタにチャット UI と コードビュー、プレビューが横並び
- スマホに Companion アプリを入れると、自分の端末で実機プレビューできる
- ファイルツリーから直接コード編集も可能
- Git の commit / push がワンクリック
特に 「実機プレビューが Companion で即座にできる」 のが画期的です。シミュレータと違って、本物のスマホでタップ感や動作速度を確認しながら開発できます。
Lovable の開発体験
- Web エディタで生成 → 即座に Web プレビュー
- Supabase 連携が UI から数クリックで完結
- Stripe 等の決済も組み込みコンポーネントが用意されている
- カスタムドメインの設定も Lovable から可能
Web 系の高速プロトタイピングという意味では、Lovable は他のどのツールよりも速いと感じます。デザインの完成度も初期出力から高く、そのまま LP として公開できる品質です。
「向き不向き」の判断軸
ここまでを踏まえて、実用的な判断基準を整理します。
Rork を選ぶべきケース
- App Store / Google Play で個人アプリを公開したい
- iOS と Android 両方に展開したい
- AdMob 収益化や In-App Purchase を組みたい
- React Native のエコシステム(Expo モジュール)を活用したい
- 後から Xcode / Android Studio で深く触る可能性がある
Lovable を選ぶべきケース
- 認証付き Web アプリを素早く立ち上げたい
- ランディングページや LP を高速制作したい
- Supabase をバックエンドにしたい
- ダッシュボードや内部ツールが必要
- Stripe 課金付きの Web SaaS を作りたい
両方使うパターン
実際の運用では、私は両方を併用しています。Web 版(マーケティングサイト、管理画面)を Lovable で、モバイル版を Rork で、というように使い分けるのが現実的です。両方とも GitHub 連携でコードを集約できるため、後から統合するのも難しくありません。
失敗しがちなプラットフォーム選択
最後に、選択ミスで時間を無駄にする典型例を挙げます。
「モバイルアプリも Web も作りたいから Lovable で」
Lovable は React Web ベースなので、無理にモバイル化しようとすると React Native への移植コストが高くなります。最初からモバイルが視野にあるなら Rork で始めて、Web 版が必要になった時に React Native の Web 出力(react-native-web)か、別途 Lovable で作るのが無難です。
「とりあえず Rork で Web 版も作っちゃおう」
Rork はモバイル特化です。Web 表示は技術的には可能ですが、モバイル UX を Web に持ち込んだ違和感のあるサイトになりがちです。Web 専用なら Lovable を選ぶ方が結果的に速いです。
「無料枠だけで完成させたい」
両プラットフォームとも、無料枠でできるのは「お試し」までです。本気でアプリを作るなら有料プランが必要で、これを「課金してから始める」ことを織り込んでください。月 $20-30 の投資で、自前で同じ環境を構築するより明確に時間が節約できます。
私の使い分け方針
最後に、私自身がプロジェクトを始める時の判断フローを共有します。
- このプロジェクトの「主」はモバイルか Web か?
- モバイルなら Rork、Web なら Lovable で初期開発を始める
- 1 ヶ月運用して、AI 生成の限界を感じたら GitHub から自前環境に持ち込む
- 両方必要になったら、それぞれのプラットフォームで分担して作る
このフローで、個人開発者が「最小の労力で最大のアウトプットを出す」のが現実的です。両方を 1 つで賄えるプラットフォームを探して時間を浪費するより、適材適所で使い分ける方が明確に速く製品が完成します。
次のアクション
もしまだどちらも使ったことがなければ、作りたいものがモバイルか Web か を決めてから、該当する方の無料枠でまず 1 時間触ってみてください。1 時間あれば「自分のプロジェクトに合うか」の感触は掴めます。
両方触れる人は、同じアイデアを両プラットフォームで作ってみるのが学びが大きいです。同じ仕様でも出力される技術スタックが違うため、その差を体験すると、今後のプラットフォーム選択が速く正確になります。