個人開発でいくつかのアプリを運用していると、ある日「これらをまとめて管理する Web の管理画面がほしい」と思う瞬間が来ます。私自身がそうでした。手元のモバイルアプリは Rork で作っていたのですが、管理画面まで Rork で作ろうとして、しばらく遠回りをしてしまいました。
その遠回りで分かったのは、Rork・Lovable・Bolt は「どれが優れているか」を競うツールではない、ということです。それぞれ住んでいる場所(モバイルか Web か)が違うだけで、作りたいものがどちらの世界にあるかが決まれば、選択はほとんど自動的に決まります。
以下では、3つのツールの違いを2026年時点の情報で整理し、料金やネイティブ機能の差を踏まえて、自分はどれを選ぶべきかを判断できるところまで一緒に見ていきます。
3社の違いを一枚の表で
まず全体像です。価格や上限は改定されやすいので、最終判断の前に各社の公式料金ページで最新の数字を確認してください。
| 項目 | Rork | Lovable | Bolt |
|---|---|---|---|
| 主な出力 | モバイルアプリ | Web アプリ | フルスタック Web |
| 生成技術 | React Native + Expo (Rork Max は ネイティブ Swift) | React + TypeScript | StackBlitz WebContainers |
| 配布先 | App Store / Google Play | Web | Web |
| ネイティブ API (カメラ・GPS・HealthKit 等) | ○ | × | × |
| 料金(執筆時点) | 無料〜 / Pro 月$25前後 / Max 月$200 | 無料〜 / 月$20〜100程度 | 無料〜 / 月$20〜50程度 |
| 主な対象 | スマホアプリを公開したい人 | 美しい Web UI を作りたい人 | バックエンド込みで一気に作りたい人 |
この表で一番伝えたいのは、横並びで優劣を比べる表ではないということです。Rork の「○」が並んでいるネイティブ API の行は、Web 専用の Lovable・Bolt にとっては「そもそも土俵が違う」だけで、弱点ではありません。以下で一つずつ補足します。
それぞれが得意なこと
Rork:モバイルアプリ特化
Rork はモバイルアプリの開発に特化した AI ビルダーです。通常版の Rork は React Native + Expo でクロスプラットフォームアプリを生成し、上位版の Rork Max はネイティブ Swift で iOS アプリを生成します。
生成されたアプリは実際のスマートフォンにインストールでき、App Store / Google Play に公開できます。ブラウザの中で動く Web ページではなく、ユーザーのホーム画面にアイコンが並ぶアプリを作るためのツールです。
Lovable:Web アプリ生成
Lovable はWeb アプリケーションの生成を得意とする AI ビルダーです。React + TypeScript ベースの Web アプリを、プロンプトから自動生成します。UI の美しさに定評があり、生成されるコードの品質も高いと評価されています。
デプロイ先は主に Web で、Supabase 連携によるバックエンド構築もサポートしています。
Bolt:フルスタック Web アプリ
Bolt(Bolt.new)は フルスタック Web アプリケーションを生成する AI ビルダーです。フロントエンドだけでなく、バックエンドの API やデータベース設計も含めた一気通貫の開発をサポートします。
StackBlitz の WebContainers 技術を使い、ブラウザ内で完全な開発環境を提供するのが特徴です。
ユースケース別の選び方
iOS / Android のモバイルアプリを作りたい → Rork
タスク管理アプリ、ヘルスケアアプリ、SNS アプリなど、スマートフォンで使うネイティブアプリを作りたいなら Rork が第一候補になります。
Rork Max を使えば、iPhone だけでなく iPad、Apple Watch、Apple TV、Vision Pro 向けのアプリも生成できます。プッシュ通知、カメラアクセス、位置情報、HealthKit 連携など、ネイティブ API へのアクセスが必要な場合は、Web 専用の Lovable や Bolt では届きません。
私が管理画面を Rork で作ろうとして詰まったのも、まさにこの裏返しでした。Rork はモバイルの世界に最適化されているぶん、ブラウザで開く管理画面のような「Web に住むもの」は守備範囲の外なのです。
SaaS やダッシュボードを作りたい → Lovable / Bolt
管理画面、顧客向けポータル、データダッシュボードなど、ブラウザで使う Web アプリを作りたいなら Lovable か Bolt が適しています。
Lovable は UI の完成度が高く、デザインにこだわる場合に向いています。Bolt はバックエンドまで含めたフルスタック開発に強いです。
ランディングページやプロモサイト → Lovable / Bolt
シンプルな Web サイトやランディングページの作成も、Lovable と Bolt が得意です。Rork はモバイルアプリ向けなので、Web サイトの生成には向いていません。
料金で見る選び方
料金体系も「モバイルか Web か」で考え方が変わります。
Rork は無料プランで React Native アプリを生成でき、本格的に作るなら Pro が執筆時点で月$25前後から用意されています。生成回数の制限が緩み、実機ビルド(EAS Build)も使えるようになります。最上位の Rork Max は月$200 で、クラウド上の Mac を使ったネイティブ Swift ビルドと App Store 公開までを一気通貫でカバーします。
Lovable は無料プランがあり、有料プランは月$20〜100 程度です。生成回数やプロジェクト数に応じた段階的な価格設定です。
Bolt も無料プランがあり、有料プランは月$20〜50 程度です。トークン消費量に基づいた課金モデルを採用しています。
私は広告収益型のアプリを長く運用してきたので、ツール代は「月の広告インプレッション何回分か」で考える癖がついています。Rork Pro の月$25 は、収益が出始めたアプリが1本あれば十分に回収できる水準です。一方で Rork Max の月$200 は、ネイティブ機能が事業の核になると確信できてから踏み込むのが安全だと感じています。
AI モデルの違い
Rork Max は Claude Opus 4.6 をコード生成エンジンとして使用しています。Opus 4.6 はエージェンティックコーディングとツール使用のベンチマークでトップクラスの性能を持ち、Swift コードの生成品質が高いです。
Lovable と Bolt は複数の AI モデルを使い分けていますが、Claude や GPT-4o が主に使用されています。
ツールの前に決めるべきこと:モバイルか Web か
どのツールを選ぶかの前に、そもそもモバイルアプリと Web アプリのどちらを作るべきかを考えると、選定はぐっと速くなります。
モバイルアプリが適しているケース。 プッシュ通知を送りたい。カメラ・GPS・センサーなどのハードウェア機能を使いたい。オフラインでも動作させたい。App Store / Google Play での公開・収益化を考えている。
Web アプリが適しているケース。 PC での利用がメイン。SEO が重要(検索エンジンからの流入を狙う)。ユーザーにアプリのインストールを求めたくない。コンテンツを頻繁に更新する。
併用という選択肢
実は、これらのツールは併用できます。例えば、Rork でモバイルアプリを作り、Lovable で管理画面(Web ダッシュボード)を作り、両方が同じ Supabase バックエンドを共有する構成は十分に実現可能です。
冒頭で遠回りした私の例も、最終的にはこの形に落ち着きました。アプリ本体は Rork、管理画面は Web ビルダー、データは共通のバックエンド。個人開発者が一人でモバイルアプリと Web 管理画面の両方を構築するのは、従来なら数ヶ月かかる作業でした。AI ビルダーの組み合わせにより、これが数日で形になる時代になっています。
次の一歩
迷ったら、まず「自分の作りたいものはホーム画面に住むのか、ブラウザのタブに住むのか」を一言で答えてみてください。スマホのホーム画面に置きたいなら Rork、ブラウザで開いてほしいなら Lovable か Bolt。ここさえ決まれば、料金や機能の細部は後から詰められます。
そのうえで、まずは無料プランで小さなものを一つ作ってみるのが一番の近道です。実際に触ると、自分のプロジェクトがどちらの世界に属するのかが、頭で考えるより早く腑に落ちます。