正直に言うと、最初は「本当に作り直す必要があるのか」という迷いがありました。
2014年から運営してきた壁紙・癒し系のアプリ群は、今も動いています。ダウンロード数は累計5,000万を超えていて、AdMobの収益も毎月一定額が入ってきます。手をかけなくても「回っている」アプリを、わざわざ作り直す理由があるのか——そういう疑問が、頭の片隅にずっとありました。
それでも手を動かし始めたのは、あるユーザーレビューを読んでからです。「UIが古くて、最近のアプリと比べると使いづらい」という、特別に辛辣なわけでもない、ごく普通の一言でした。数年前なら気にならなかったかもしれない。でも、Rorkで別のアプリを試してみた後に読むと、少し胸に刺さりました。
今の自分なら、もっと良いものを作れるのに、という感覚。それが背中を押しました。
Rorkで壁紙アプリを作るとどうなるか
結論から書くと、コア機能の実装にかかった時間は、私の予想の3分の1以下でした。
画像ギャラリーの表示、カテゴリ別フィルタリング、お気に入り保存、ダウンロード機能、ホーム画面への設定補助——これらを実装するのに、以前なら1ヶ月はかかっていた工程が、Rorkとのやり取りで数日でほぼ動く状態になりました。
特に驚いたのは、パフォーマンス周りです。大量の画像を扱う壁紙アプリは、スクロール時の描画パフォーマンスが命です。FlashListを使ったリスト最適化や、expo-imageによるキャッシュ戦略を「こういう仕様にしたい」と伝えるだけで、実用に耐えるコードが出てきました。かつて自分でパフォーマンスチューニングに費やした時間を思うと、正直複雑な気持ちにもなります。
しかし、「AIが得意なこと」と「人間がやるべきこと」の境界線も、はっきり見えてきました。
AIが得意なこと、人間がやるべきこと
Rorkが本当に強いのは、「どう作るか」の部分です。コンポーネントの設計、APIとの接続、状態管理の骨格——こういった実装レイヤーは、驚くほどスムーズに出力してくれます。
一方で、「何を作るか」「どう見せるか」「誰のために作るか」という判断は、AI任せにするほど品質が落ちると感じました。
たとえば、壁紙のカテゴリ設計は、単なる分類の問題ではありません。「癒し」と「自然」はどう違うのか、「ダークテーマ」と「シンプル」はどちらが先に来るべきか——ユーザーの心理と行動を10年観察してきた私にしか判断できない部分があります。Rorkはこの設計を「提案」してくれますが、最終判断は人間にしかできないし、すべきでない。
もう一つ、思い切り手を動かさなければいけなかったのが、収益化の設計でした。
AdMobの配置一つとっても、ユーザー体験を壊さずに収益を最大化するための位置・タイミング・頻度の設計は、試行錯誤の塊です。過去に何百万人もの行動データから学んだ直感がある。Rorkはコードとして実装してくれますが、「どこにどんな広告を出すか」の判断根拠は、長年の実績から来るものです。ここはまだ、人間の経験値が圧倒的に優位だと感じています。
作り直して、何が変わったか
リリースしてから数週間が経ちます。ユーザーの反応は、以前のバージョンと比べて明確に良くなっています。セッション時間が伸び、レビュー評価も上がりました。
でも、それ以上に感じているのは、自分が作り手としての役割を再定義できたという感覚です。
以前は、実装に追われて戦略を考える時間が取れなかった。Rorkによって実装コストが下がった分、私はユーザーリサーチ、コンテンツの質、マーケティング設計に時間を使えるようになりました。作ることに費やしていたエネルギーの一部を、「届けること」に振り向けられるようになった。
宮大工だった両祖父から受け継いだ「丁寧に作る」という信念は、今も変わらずにあります。ただ、その「丁寧さ」を発揮する場所が、少しずつ変わってきているのだと思います。実装の丁寧さより、設計の丁寧さへ。コードの質より、ユーザー体験の質へ。
AIツールを使いこなすことは、手を抜くことではありません。自分が本当に価値を発揮すべき部分に、力を集中させることです。
壁紙アプリの作り直しで学んだことは、Rork Lab の技術記事として少しずつ形にしています。実装の詳細が気になる方は、Rorkで壁紙アプリをゼロから作ってApp Storeに公開するまで も参考にしていただけると嬉しいです。
同じく個人開発のキャリアと収益化の実態については、AdMob月150万円までの道のり — 16年間のアプリ開発で築いた個人開発者の収益化実録 に書きました。
まだ迷っている方、ぜひ一度 Rork を触ってみてください。「作れるようになってから考える」より、「作りながら考える」ほうが、ずっと早く答えが見つかると思っています。