「Lovable と Rork、どっちがいいですか」と聞かれることが増えました。私はいつも、答える前にひとつだけ質問を返します。「そのアプリ、最終的にどこで動かしたいですか」と。
機能表を並べて優劣を競うと、この比較はかえって分かりにくくなります。2つは似たコンセプト(AI でアプリを組む)から出発していますが、アプリが暮らす場所がそもそも違うからです。ここが決まれば、料金や細かい機能の差は二次的な話になります。
まず押さえる違い — 「動かす場所」が分かれている
Lovable は Web アプリ、Rork はスマートフォンのネイティブアプリを主戦場にしています。技術スタックもそれぞれ React + Supabase、React Native(Expo)と分かれていて、これは後から擦り合わせられる差ではありません。主な違いを整理すると次のようになります。
| 項目 | Lovable | Rork |
|---|---|---|
| 主なプラットフォーム | Web アプリ | モバイルアプリ(iOS / Android) |
| 技術スタック | React + Supabase | React Native(Expo) |
| 想定ユーザー | Web 開発者・スタートアップ | モバイルアプリを作りたい人 |
| 月額の目安 | $20 〜 | $25 〜 |
| 無料プラン | あり(制限つき) | なし |
| App Store 提出 | 非対応 | 対応 |
月額の差はわずか $5 ほどで、ここで悩む必要はほとんどありません。効いてくるのは下2行、無料プランの有無とストアに出せるかどうかです。
Lovable が向いている場面
Web アプリを最短で形にしたいときは Lovable が快適です。React コンポーネントの生成が速く、Supabase 連携がネイティブなので、データベース設計からフロントエンドまでひとつの環境で通せます。生成したコードを GitHub に同期できるため、後から自分で手を入れたい開発者にも馴染みます。公開もワンクリックに近く、独自ドメインの設定も難しくありません。
無料プランがあるのも、最初の一歩としては大きな利点です。何を作るか固まっていない段階で、まず触って感触を確かめられます。
Rork が向いている場面
一方、成果物を App Store や Google Play に並べたいなら Rork です。Web ビルダーでは原理的にできない、実機にインストールされるネイティブアプリを生成できます。上位プランの Rork Max ではカメラ・GPS・プッシュ通知・HealthKit といった、モバイルでしか意味を持たない機能まで扱えます。
ランタイムエラーを自動で検出して修正案を出す「Fix Now」も Rork 独自の仕組みです。端末ごとの差が大きいモバイルでは、こうした自動修正の価値は Web より素直に効きます。
表に出てこない、選ぶときの実感
ここからは、12年ほど個人でアプリを出してきた(累計で 5,000 万ダウンロードほどになりました)立場から、機能表に載らない実感を書きます。
私が運営しているのは壁紙アプリや癒し系のアプリです。これらは、ホーム画面に置かれること・端末の壁紙設定 API を叩くこと・新着を知らせる通知が届くことが前提になっています。この時点で、どれだけ Web ビルダーの開発体験が良くても選択肢から外れます。「どこで動くか」が機能の良し悪しより先に効くというのは、こういう意味です。AdMob のようなモバイル広告 SDK で収益化している場合も同じで、Web 側にはそもそも組み込み先がありません。
もうひとつ、ストア提出について正直に書いておきます。2014年からアプリを出してきて痛感するのは、モバイル開発の本当の難所はコードを書くことではなく、審査を通すことだという点です。プロビジョニング、署名、App Store レビューでのリジェクトと再申請——ここで時間が溶けます。だから Rork を評価するときは「ネイティブアプリを生成できる」で止めず、「この提出の山をどこまで肩代わりしてくれるか」で見るのが現実的です。生成はゴールではなく、審査の入り口に立てた状態だと捉えておくと、期待値を見誤りません。
「Fix Now」についても、プレビュー上で直ったように見えても、私は必ず実機で再現確認をします。モバイルのランタイムエラーは端末の世代や OS バージョンで顔つきが変わるので、シミュレータと実機の往復は省けない工程です。
どちらを選ぶか
判断はシンプルにできます。作りたいものがブラウザで完結するなら Lovable、スマートフォンの中で動く必要があるなら Rork です。まだ何を作るか決まっていないなら、無料で試せる Lovable で手を動かしてみて、「これはスマホアプリじゃないと成立しない」と感じた瞬間に Rork へ移る——この順番が、お金も時間もいちばん無駄にしません。
次の一歩としては、自分のアイデアを一文で書き出し、その末尾に「ブラウザで開く」か「ホーム画面に置く」かを添えてみてください。そのひと言で、選ぶべきツールはほぼ決まります。